民事訴訟の流れ
ここでは民事訴訟を起こす際の流れについて、わかりやすく簡潔にご説明します。
A. 裁判前の準備
- 1.管轄権の特定
- アメリカで裁判を起こすための第一歩は、管轄権の特定です。全米50州の州裁判所と連邦裁判所という51の裁判管轄権の他に、ワシントン特別区の裁判所を加えて52の管轄権があります。さらに、特殊な内容のケースに対応する裁判所もありますので、該当するケースがどこの裁判所の管轄になるのか、誤りなく確実に特定しなければなりません。
- 2.時効の確認
- 裁判を起こすにあたり注意しなければならない点は、時効の成立時期です。時効が成立する案件の場合、せっかく裁判を提起しても無駄骨になってしまいます。但し、時効は訴えの原因次第で異なりますので、ある理由による時効が成立していても、必ずしも該当する案件が全て裁判を提起できないという訳ではありません。時効期間がより長い理由を利用すれば、起訴できる可能性は高まります。
B. 審査前手続き
- 1.原告の訴状
- 原告が訴状を提出すると裁判が開始されます。
訴状の中には、事実関係、争いの内容、法律上の根拠、損害額若しくはその他の救済措置等が記載されます。
- 2.送達
- 原告が提出した訴状は、被告に対して送達されなければなりません。相手方に正当な手続きで送達が行われて初めて、裁判の審理が開始できます。
- 3.被告による応答
正しい手続きで送達を受けた被告は、一定期間内に訴状に対して回答しなければなりません。期限内に回答をしなかった場合には、欠席裁判が成立してしまう可能性があります。また、被告はここで反対に原告に対して訴えの申立も出来ます。
- 4.審理前会議
- 実際に裁判の場での審理が開始される前に、裁判官と相手方を含めた三者で様々な会議が行われます。
例)スケジュールを決定する会議、和解の進捗状況を確認する会議、審理日程を決定する会議、…等
- 5.裁判所による和解・仲裁命令
- 州によっては裁判所が、和解や仲裁を行うように命令を出します。
- 6.ディスカバリー
- 公式、あるいは非公式の事情聴取、宣誓供述、書面による審問、証拠提出請求等を通じて証拠を収集し、必要に応じて相手方に証拠の提出を強制します。
- 7.モーション
- 裁判官にたいして、法律上の効果をもたらす判断を正式に要求する文書を提供します。
例)期限のある手続きに関して期限の延長を求める。
- 8.共同メモランダム
- 裁判が開始される前に、原告・被告が共同で裁判官に文書を提出します。
- 9.陪審の選定
- 陪審の選択は重要な手続きです。場合によっては陪審でなく裁判官による判決を選択もできる一方、陪審が認められないこともあります。いずれにせよ陪審の選択は極めて重要であり、自分に不利になるような信条、考え方を持っている陪審候補は排除しなければなりません。
C. 裁判
- 1.冒頭陳述
- 裁判の審理開始にあたり、案件の全体を説明する機会です。原告及び被告がそれぞれの主張全体を簡潔に説明します。
- 2.原告立証
- 原告が自らの主張を証人や証拠等を通して立証していきます。
- 3.被告立証
- 被告が自らの主張や反論を、証人や証拠等を通して立証していきます。
- 4.最終弁論
- 裁判の審理終了にあたり、原告、被告双方が自らの主張は正しく、判決はその主張に沿ってなされるべきだと訴える機会です。
- 5.陪審への指示
- 陪審が審理を開始する前に、ガイドラインが説明されます。
- 6.陪審の審理
- 陪審が提示された証言や証拠に基づいて結論を導きます。
- 7.評決
- 陪審によって判断が下されます。