訴訟に巻き込まれた経験がない場合、または巻き込まれた経験があったとしても、訴訟プロセスは謎につつまれ、複雑で、完全に入り組んでいる様に見えるかもしれません。この記事の目的は、あなたが典型的な訴訟の各段階で予想される事態をよりよく理解できる様に、裁判制度を通じて訴訟がどのように進行するかに関する基本的な情報の提供です。
米国は多くの国と同様に、秩序ある公正な社会を確保するための一連の原則または理想である、法の支配により統治されています。 これらの原則の下で機能するために、米国には 3 つの独立した政府部門があります。(1) 法律を制定する立法機関 (2) 法律を執行する行政機関 (3) 法律を解釈し、個々の事件に適用する司法機関。 司法機関は、州レベルと連邦レベル両方の裁判制度で構成されており、ここで訴訟が開始されます。 以下に示す情報が、簡略化された訴訟プロセスの説明である点に留意してください。プロセス中に発生する可能性のある、訴訟のすべての段階そしてあらゆる種類の訴訟には、優れた弁護士であれば舵取りの方法を知っている、例外と微妙な差異があります。
訴訟を提起する
訴訟は連邦裁判所と州裁判所のどちらに訴訟が提起されるかで、異なる民事訴訟手続により規定されますが、全ての訴訟に適用される基本的な規則があります。 訴訟を提起した人は「原告」、訴訟を提起された人は「被告」です。[1] 原告は、裁判所への訴状の提出、そして申立手数料の支払いにより訴訟を開始します。 訴状の中で原告は、申し立てられた事件の事実と、法的救済を求める根拠を概説します。 原告は通常、令状送達人と呼ばれる個人を通じて、召喚状と訴状のコピーを被告に送達し、訴状の提出を被告に知らせます。被告は、送達された後指定された期間内に回答を提出し、訴状に応答しなければなりません。 答弁書において被告は、それぞれの事実に基づく申し立てを容認または否認し、積極的抗弁と呼ばれる原告が間違っている理由を提示します。 場合によっては、被告が反訴または交差請求を答弁書に含めます。 反訴とは、原告に対して被告が主張する請求であり、訴状で主張された元の請求の対象に関連するものです。交差請求とは、訴状または反訴で主張された元の請求の対象に関連する事案において、ある被告が別の被告に対して主張する請求です。 反訴または交差請求がなされた当事者も、指定された期間内に答弁書を提出しなければなりません。
ディスカバリー
事実ディスカバリー
答弁書が提出されると (また被告が複数の場合は最初の答弁書が提出されると)、事案は通常、単に「ディスカバリー」と呼ばれる証拠開示段階に移行します。 証拠開示手続きの目的は、事実関係の明確化と、相手方が保有する関連証拠の「開示」です。 通常証拠開示は、各当事者の相互で自発的な開示の提供から始まります。 開示において当事者は、連絡先情報と各証人の潜在的な証言についての説明とともに、証人の名前を挙げます。 当事者はまた、訴訟の対象に関連するすべての文書を開示する必要があり、原告は申し立てた損害のために要求する、金銭的損害の計算を提供する必要があります。 被告が反訴または交差請求を通じて損害賠償を求めている場合、被告も金銭的損害の計算を提供する必要があります。
最初の開示が交換されると、当事者達は相手方から受け取った証拠を確認し、その後、訴訟の法理を立証するために必要な追加情報を決定します。その情報は、証言録取、書面による証拠開示、および財産や物品の物理的検査を通じて入手可能です。 証言録取は、当事者または証人が相手方から尋問される、宣誓した上での口頭審理です。 法廷速記者も同席して証人に宣誓をさせ、すべての質問と回答を書き留め、書面による記録を作成します。 すべての当事者またはいずれかの当事者によって指名された証人の証言録取を要求できます。
当事者は、お互いに書面による証拠開示を行えます。 書面による証拠開示は、質問書、書類の提出要求、および同意の要求で構成されます。 質問票とは、ある当事者からもう一方の当事者に送られ、訴訟での主張に関する情報を求める、書面での一連の公式な質問です。 質問票は多くの場合、文書、電子メールやテキストメッセージなどの電子データ、および相手方当事者が保持する訴訟に関連する可能性のある物品の入手に使用される別の開示手段である、書類の提出要求を伴います。同意の要求により、一方の当事者が他方の当事者に陳述の真実性を認めるか否かの質問が可能になります。 事実ディスカバリーが完了すると、専門家ディスカバリーが開始されます。
専門家ディスカバリー
この段階では、各当事者は原告から始めて、申し立てられた主張または抗弁を裏付けるために、裁判で用いる予定の専門家証人をもう一方の当事者に開示します。 専門家証人は、事案に関連する特定の分野における特別な知識または能力を理由に、裁判での証言を許可されている人です。 専門家はすべての事案に必要とは限りませんが、多くの場合、当事者が専門家を雇って陪審員に彼らの事件の証明を援助してもらうのは有益であり、必須ですらあります。専門家証人は、主張と抗弁を立証するために陪審員に技術的またはその他の専門的な情報を説明でき、また相手方が間違っている理由を示すのに利用できます。たとえば自動車事故の訴訟の場合、事故がどのように発生したかについての一方の主張を立証するために、事故再現の専門家を雇う必要があるかもしれません。 医療過誤訴訟の場合、通常医療提供者がいかに治療水準を満たさず、患者に危害を加えたかを説明するために、医療専門家の雇用が義務付けられています。 専門家が開示されると相手方は、その専門家自身の意見についてレポートを書くように要求するか、彼らの意見の口述記録を取得するために、専門家の証言録取を依頼する機会があります。
裁判の準備完了
裁判前期間
事実ディスカバリーと専門家ディスカバリーが完了すると、当事者の 一方が裁判の準備が完了した旨の証明書を裁判所に提出します。 裁判は裁判官に事件が提出され、提示された事実と関連法に基づき事件の判決を下す裁判官裁判、または裁判官が管理し、提出された証拠についての裁定を下すも、事件の判決の決定は陪審員に任せる陪審員裁判のいずれかになります。
裁判所は裁判期日を設定し、両当事者が裁判で証言のために召喚する予定の証人の名前と、裁判中に使用する予定の文書を交換すべき期限を提供するために、進行協議を開催します。 この期間中いずれの当事者も、裁判官に対して相手方の裁判における特定の証人の証言と、特定の文書の提出の禁止を求める、「証拠排除の申立」を裁判所に提出できます。 当事者がこれらの動議の提出を許される理由はいくつかありますが、主な理由は、当事者の訴訟に害を及ぼす可能性のある情報を陪審員に提示しないためです。 裁判前期間が終了すれば、いよいよ裁判です。
裁判
裁判の過程は、ここで説明できるものよりはるかに複雑ですが、簡単な概要は役に立つでしょう。 裁判が始まる直前に、両当事者は法廷に集まり、事案を審理する陪審員を選びます (陪審員が折よく要求された場合)。 選定が完了すると、当事者は最初に原告、次に被告が冒頭陳述をし、各当事者はその事案の理由を説明して、事実認定者 (裁判官または陪審員) に、どのような証拠を提示するか、彼らが証明したい内容、なぜ事実認定者が当事者に有利な決定を下すべきなのかを伝えます。 冒頭陳述が終わると、当事者は証人の証言と具体的な証拠を通じて主張を行います。各当事者が全ての証拠を提出した後、各当事者は最終陳述を行い、事実認定者に当事者が有利な判決を受けるべき理由を伝えます。 陪審事件では、裁判官が紛争に適用される法律について陪審員に説示し、事実を法律に適用して事案の判決を出すよう陪審員に依頼します。 陪審員は提出された証拠を検討し、法に基づいて誰が勝つべきかを決定し審議するために、別の部屋に送られます。 裁判官裁判では、裁判官が判事席からの口頭または後の決定であれば、場合によっては書面で、事案と法を検討します。 裁判が終了すると、陪審員 (または裁判官) が法的に間違っているとして、当事者の 一方が上訴を決定できます。 上訴とは、上級裁判所に事件を調査し、下級裁判所で起こったことが法の下で正しいかどうかを決定するよう求められる手続きです。
その他の選択肢
訴訟プロセスの主な最終目標は裁判ですが、当事者達は多くの場合、裁判の費用を回避し、より迅速な解決を得るために、紛争をむしろ別の方法で解決するよう決定します。 調停は、紛争を解決する 1 つの方法であり、訴訟のどの段階でも行えます。 これは当事者が、紛争の一部、またはすべてを解決する和解に到達するため、当事者に働きかける訓練された調停者を選択するプロセスです。 当事者が自発的に調停に参加する場合もあれば、裁判所が当事者に紛争の調停を命じ、それ以上裁判所の関与なしに解決できるかを確認する場合もあります。 調停自体には拘束力はなく、当事者間で和解に至らない場合は裁判に移行します。
結論
この概要からもわかるように、訴訟は長く複雑なプロセスになる可能性があります。問題となっているものが、彼らのビジネス、評判、または愛する人の健康であるかどうかに関わらず、訴訟はしばしば当事者にとって、感情に訴えかけるストレスの多い経験です。当事者が自ら法廷に出廷する選択をする場合もありますが、優れた弁護士はあなたのために法制度を案内し、法の下でのあなたの権利について助言し、法廷や私的な法律問題であなたを代理し、他の弁護士や裁判官と連絡を取り、あなたもしくはあなたのビジネスのために、法律、規則、および規制を解釈します。 訴訟には他にも多くの側面がありますが、願わくはこの概要で、訴訟がどのように機能し、訴訟に関与した場合に何を予期すべきかについてのアイデアが得られるよう願っています。
[1] 訴訟が離婚の申し立てのような、申し立てである場合、訴訟を提起する人物は、「申立人」、訴訟を提起された人物は「被申立人」となります。
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