相続は、準備よければ全てよし

遺言・信託

家族のためにできる最高の贈物は、相続の準備を今始めることです。万一のとき家族が困らないように弁護士と相談して遺言を作成したり、信託を残したりできます。本稿がきっかけとなり、相続を計画して、あなたの望みが実現され、財産の分配が思い通りに実現されるように願っています。
統計によれば、アメリカの成人の半分も、遺言を作成していません。そして、その割合はここ数年でさらに下がっているようです。あなたがまだそれに手が回らないうちの1人ならば、遺言なしに旅立つリスクをとっています。つまり、あなたが旅立ったときには、政府が、あなたがやり残した判断を、代わって下すのです。

政府の判断

州法は、あなたが遺言又は信託を作成していないとき、あなたの財産がどのように分けられるか規定しています。詳細は州によって異なります。しかし、原則としては、政府は、あなたは、財産を配偶者、両親、その他へ分けるように考えていたとみなします。
政府の推定が、偶然あなたの望みと同じならば、それは問題ないかもしれませんが、おそらく、そうではないでしょう。多分、あなたは自由に配分を決めたかったでしょうし、親戚でない人か、又は直近でない親戚(たとえば、お気に入りの姪など。)に財産を分けたかったかもしれません。そして、多分、あなたは特定の財産(車とか、家宝等)を、決まった人に渡したかったかもしれません。あなたが遺言を残していなければ、これらのうちのどれも実現しません。
あなたに未成年の子供がいれば、遺言で誰が彼らを養育するか指示できます。あなたが遺言を残していなければ、裁判所が決定しなければなりません。そうなれば、手続きが面倒になるだけでなく、あなたであれば頼みそうにもない人が面倒を看る決定がされるかもしれません。
結局、あなたが遺言か信託を残していなければ、遺産の検認手続き(負債や税金の支払い、遺贈、その他の問題処理)が面倒になるのです。遺産分割の経費と時間がさらにかかり、結果として遺族への負担となります。

あなたの判断

遺言又は信託に何を入れるべきかの方程式はありません。相続の計画をするときに、弁護士と何が必要か相談してください。
信託にあなたの財産の全部又はほとんどを含めるとして、遺言か信託にどのような規定を入れたらよいのか一般的なアイデアを出しましょう。これが完全なリストというのではありませんが、出発点としてはいいでしょう。

財産の贈与

遺言と信託の一番大切な部分とは、あなたの財産を誰が受け取るかの判断です。住所やあなたとの関係を記して、誰が受取人かを間違いなく特定してください。最悪は、誰が贈与を受けるのかについて混乱させることです。
あなたが文書にしている時点からそれが実行される時点までに、何か変化がおこるかもしれないと心に留めておいてください。あなたの受取人のうちの1人があなたより先に死ねば、どうなりますか?あなたは、その人への贈与が彼の相続人にいくようにしたいですか、またはあなたが指定する他の誰かにいくようにしたいですか?どちらでもあなたの望みの通りに遺言か信託でできますが、弁護士はあなたの希望を知っておく必要があります。
そして、あなたが残した贈与の記述の仕方で、引き起こされるかもしれない混乱を予め検討して下さい。たとえば、ある財産があなたが文書にしている時とあなたが死んだ時の間で変る可能性があれば、一般的な表現を使ったほうがよいかもしれません。ある特定の500株を誰かに譲るという表現にしないで(あなたが死ぬ前に、その株を売って何かほかのものを購入するかもしれません。)、死亡時に「私の所有する株券」とか、その割合とか、金額とかを指定したほうがいいでしょう。
また、あなたの財産が保険証書、預金口座、従業員給付とかストック・オプションのような無形財産を含んでいるかもしれないことに注意してください。これらのもののうち、いくつかはその形成の仕方次第で、遺言とか信託の対象とならない(生存者への権利の帰属を認められた合有不動産権の場合、あなたの死亡時に財産は自動的に配偶者のものとなります。)かもしれませんし、受益者が特定されているもの(あなたの配偶者へ直接渡る雇用給付金等)かもしれません。弁護士と相談しながら、あなたが所有する全ての財産の完全なリストを作成し、それら全てがどう分配されるのか調整することは重要です。
賢明に贈与すると節税もできます。遺言と信託を通して、人に対してだけでなく、どこかの組織とか慈善団体に寄付もできます。

不動産贈与

大多数の人は、配偶者による家屋の相続を望みます。それが合有不動産でなければ、遺言又は信託でどうするのか指定しなければなりません。
家屋を担保にしている借入金を返済する前にあなたが死ねば、通常その不動産で清算しなければなりません。そのようにしたくないか、家屋の相続人が返済金を継続して支払ってほしいのであれば、遺言か信託の中で規定しなければなりません。

執行者・受託者

あなたは、遺言の執行者及び執行者に万一のことがあって責任を果たせないときのために承継人を指定しておくべきです。(信託の場合も、その受託者に関して同じようにしなければなりません。)執行者があなたの財産を管理するために、(1)不動産の購入、賃貸、販売、抵当権設定、(2)貸借金、(3)税務に関する権限を規定しておくのもよいでしょう。執行者にこういった柔軟性を与えておけば、予期しない状況に対処するための何ヵ月もの遅れや多額の経費を避けられます。

残余条項

遺言その他で特定していない財産を全て網羅するために、遺言の中で一番重要な部分です。遺書を書いた後に、新しい財産形成をして、誰かに贈与する規定をしていなければ、それは遺言からもれてしまいます。残余条項は、そのような財産を全て誰かに贈与できます。(遺言が残余条項を省略していて、誰にも贈与されていない財産が残っていれば、無遺言相続法に基づいて、時として長い時間をかけ裁判所の関与をへて、遺言に基づかないで処理されるのです。)

遺言信託

遺言を通して信託(遺言信託)を準備できますし、あなたが生前に作った信託へ基金を直接あてるように遺言の中で規定できます。(つまり、注ぎ込み条項つきの遺言となります。)通常、遺言の中の独立した条項で規定します。

遺言か信託か?

ここまでくれば、遺言とは何か大体わかったことでしょう。法律的には撤回可能な文書(すなわち、状況に応じて、又は気が変わったりして変更できるという意味です。)で、それによって死亡した際に、あなたの財産を分与し、あなたの望みを実行するために誰かを指定しておくものです。遺言は、少なくとも古代エジプト人の時代から利用されています。
信託はもっと新しく、一般的になりつつあります。遺言のように、死亡時に財産を分与する点は似ていますが、あなたにとって重要になり得るいくつかの利点があります。たとえば、バイパス信託は、節税にとても効果的です。
撤回可能な生前信託には税務上の効果があまりないかもしれませんが、以下のように役立つ点もあります。

  • 設定と変更が比較的簡単です。(遺言には、多くの形式的な決まりがあります。)
  • 検認手続きを省略したり、最小限にできます。
  • プライバシーを守れます。(遺言と違って、通常は登記が不要です。)
  • 生前に管理するのが楽です。(万一、あなたに判断能力がなくなったり、単純に自分でやるのが面倒だったら、受託者が、投資とかその他の財産を管理してくれます。)
  • あなたの財産を何年もかけて分与できます。(一度に全ての財産を贈与してしまう遺言と違い、信託は何年も機能し続け、あなたの死後長い間に渡って財産をどう分配するかについて、あなたの願み通りにしてくれます。)

弁護士は、あなたの状況を考慮して生前信託か他の信託がよいか、あなたが決断できるように手伝ってくれます。

※この記事は法律上の助言を構成するものではなく、一般的な法的原則の一般的な概要のみを示しています。 これらの原則は、管轄地によって異なる場合があります。 ご自身の特定の状況については、弁護士に相談する必要があります。 この記事の公開によって弁護士と依頼人の関係が形成されません。

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