関税(第2回):国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づきトランプ大統領が発動した関税をめぐる現在進行中の法的争い

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IEEPA関税訴訟の概要

2025年、トランプ大統領は国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に、多くの国からの輸入品へ大規模な関税を課しました。

通常、関税制度は連邦議会が定めます。しかし、今回の措置は議会の承認を経ず、大統領の判断だけで導入された点が大きな特徴です。

これに対し、輸入業者などは「IEEPAは関税を課す権限まで認めていない」として提訴しました。この訴訟は Learning Resources, Inc. v. Trump として争われており、最終的な判断は連邦最高裁判所に委ねられています。


IEEPAとは
IEEPAは1977年制定の法律です。外国からの異常かつ重大な脅威に対応するため、大統領による資産凍結や経済制裁などの緊急措置を認めています。

これまでイランや北朝鮮への制裁、テロ組織の資産凍結などに活用されてきました。経済全体に及ぶ包括的な関税措置の根拠として用いられた前例はありません。


裁判で争われているポイント
原告側は、IEEPAには関税や輸入税を課す権限が明記されていないと主張しています。課税や関税の決定は議会の専権事項であり、大統領が代替できる権限ではないという立場です。

さらに、IEEPAをそのように解釈できるとしても、議会が明確な基準を設けずに広範な裁量を大統領へ委ねるのは、憲法に反すると主張しています。

これに対し、トランプ政権は、巨額の貿易赤字や不法移民、フェンタニルなど違法薬物の流入は国家的緊急事態に当たると反論しています。そのため、IEEPAに基づく関税措置は適法であると主張しています。


今後の見通し
2025年11月、連邦最高裁判所で口頭弁論が開かれました。

下級審では、IEEPAは包括的な関税措置を認めていないとして、政権側に不利な判断が相次いでいます。近年の最高裁も、行政機関や大統領への広範な権限委任には慎重な姿勢を示しています。このため、IEEPAに基づく関税措置を違法と判断するとの見方があります。

外交や国家安全保障の分野では、大統領の裁量を広く認めるべきだという考え方もあります。そのため、最高裁が政権側の主張を一定程度認める余地も残されています。


結論
本件は、大統領が緊急経済権限を用い、議会の承認を経ずに大規模な関税を課せるかが問われる訴訟です。米国の通商政策だけでなく、大統領権限の範囲を左右する重要な判断となります。

最高裁の判断は、今回の関税措置の適法性にとどまりません。今後の経済政策や緊急経済権限の行使にも大きな影響を及ぼすとみられます。

※本記事執筆当時は、IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税措置をめぐる訴訟が連邦最高裁判所で係属中でした。その後、2026年2月20日、連邦最高裁判所は、IEEPAは大統領に関税を課す権限を付与していないと判断しました。

今回の判決は、関税政策に関する議会権限と大統領権限との境界を改めて明確にした重要な判例となりました。最高裁は、関税は本来、連邦議会が決定すべき重要な通商政策であり、その権限を大統領に認めるためには、議会による明確な法律上の授権が必要であるとの考え方を示しています。

企業の立場から見ると、本判決により、IEEPAを根拠とする関税措置には明確な法的限界が示されました。一方で、本判決はIEEPAに基づく措置を対象としたものであり、通商拡大法第232条(Section 232)や通商法第301条(Section 301)など、他の法律に基づく関税措置まで判断したものではありません。そのため、米国で事業を展開する企業は、関税政策そのものだけでなく、その法的根拠や今後の立法・行政・司法の動向も継続的に確認する必要があります。

本判決は、今回の関税措置の適法性にとどまらず、緊急経済権限の範囲や行政権と議会権限の関係を改めて示した判例として、今後の米国通商法及び米国憲法の解釈に大きな影響を与える重要な先例となる可能性があります。

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