有限会社の訴訟

会社法

序文

有限会社、又は「LLC」は、パートナーシップの柔軟性と法人の有限責任とを併せ持ちます。米国では多くの場合、ビジネス目的の法主体としてLLCが選択されるようになりました。このため、訴訟ではLLCの問題がしばしば発生します。この記事では、LLCに関連する訴訟で生じる、いくつかの一般的な問題を検討します。

背景

最初に、LLCが生まれた経緯が大切です。LLCは法令によって生み出されます。米国では、それぞれの州がLLCの設立と経営を管理するLLC法令を制定してきました。LLC法令統一法委員会(弁護士及び研究者による評議会)は、多くの州が全て、又は一部を制定している雛型のLLC法を起案してきました。

LLCは適切な文書を、その法人が開設される州政府に申請する事で設立されます。申請は、州政府によって求められる単数、または複数の文書からなるのが一般的です。LLCの所有者は、「メンバー」として知られます。一人または複数のメンバーが存在する可能性があります。その法人を経営するものは「マネージャー」と呼ばれます。マネージャーはメンバーであっても、メンバーでなくとも構いません。メンバーは自分達自身をマネージャーに任命すれば、自ら経営できます。従ってLLCは、よくメンバー経営やマネージャー経営と分類されます。その法主体は、そのメンバーとマネージャーからは切り離された、制定法上の法人格です。

メンバーは、メンバーとなる事の合意を記録し、かつLLCの経営方法が記載された契約を結べます。これは、LLCの「経営契約」として知られています。この経営契約は、持分権、マネージャーの任命、議決権、課税措置、会社の解散(解除)を含むメンバーのLLCにおける活動の全ての側面、そしてメンバー内でメンバーが合意し得るその他の全ての項目を網羅します。LLCの経営契約は長くても、短くても問題ありません。LLC法は多くの場合、メンバーが経営契約を締結しない際には、州政府のLLCの法の規定がメンバーにとって効力のある経営契約となると定めています。

LLC法は一般的に、会社の活動についてメンバーが有限責任を有すると定めています。それと同時に、LLCの法主体は株式会社の株主に必要とされる、形式的手続きの多くを排除します。このような二つの利益は、最大限の柔軟性と、会社活動に対して会社経営に関する必要最小限の責任を欲するビジネスの関係者にとって、LLCの法主体を魅力的なものにします。

このような背景を念頭におき、次にLLCに関する訴訟で生じる一般的な問題を考察します。

訴訟の問題

LLCには、係る2つの代表的な行為があります。一つ目はLLCのメンバー内のもので、二つ目はLLCと第三者との間のものです。それぞれの状況で発生する共通の問題があります。

メンバー内の活動:

LLCのメンバー内の訴訟は多くの場合、メンバーの持分権の量に関する争い、経営契約違反に関する契約上の請求、及び法主体の解散を含みます。これらについて次に説明します。

持分権:メンバーの持分権に関する争いは、極めて一般的です。経営契約のメンバーそれぞれの持分権が何であるかの設定が、なぜ、いつ、計画されたかを問われるかもしれません。回答は多方面に及びます。当事者が経営契約を締結しない場合があります。また、経営契約を作成しても署名しない場合もあります。或いは、経営契約の内容について議論がある場合もあります。多くの場合、書面での経営契約に代わり、或いは加えて、当事者が口頭で契約を締結したという申立があります。かなりの頻度で、メンバーが各メンバーの貢献に起因した価値について論じ合います。これはメンバーが、金員以外のものに、例えば現金ではなく業務からなる貢献を行った際に、特に顕著にみられます。多くの場合、貢献が何を意図したものであるかをメンバーが争います。

これらのそれぞれの状況は、裁判で何度も繰り広げられます。ここでのポイントは簡単です。つまり、それぞれのメンバーの持分権の記載を含み、それぞれのメンバーの貢献が何であるのか、経営契約に含まれていない同意はメンバー内にはなく、経営契約へのいかなる修正も書面によって行われ、メンバーの署名により効果を有する、良い経営契約を用意して署名することに、細心の注意を払うのです。こうした目的を達成するために、この時点で法律顧問を雇うのは、後からより大きな費用を用いて訴訟を起こすよりも、賢い資産の投資です。

経営契約違反に関する契約上の請求:

LLCのメンバー内におけるもう一つの一般的な争いは、経営契約違反に関する契約上の請求に関係します。これらは多様な形をとりますが、当然ながら多くの場合、経営契約に基づいて権利を得ている資金の全てを受け取っていない、或いは、別のメンバーが権利を得ている以上を受け取っているという、メンバーの主張に関連します。メンバーによる他の主張は、経営契約自体の条件と同じくらい多く様々です。それらは一般的に、メンバーが署名による同意の特定の条項を破っている、という主張を伴っています。表面化するかどうかは別として、事実上、こうした論争は金銭論争です。アメリカの民法裁判システムでは、基本的に原告への損害の賠償を代表的に扱っているのも合点がいきます。

こうした主張の一部分として、大方契約違反の対として請求されるのは、信認義務違反です。この事象はメンバーがマネージャーでもある場合に最も多く起こります。マネージャーは、LLCの日々の経営を行うという業務を課されます。そのためにマネージャーは、会社の最良の利益のために業務を行う特別な義務、又は信認義務を負います。マネージャーが義務に従わない場合、メンバーはその結果生じた損害を訴える事ができます。こうした請求は、契約とは別の義務に基づいて契約外で発生しますが、契約上の請求と並んで発生することが多いです。

LLCの解散:

LLCに頻繁に発生する最終的な争いの1つは、LLCの解散です。経営契約は、LLCの解散を必要とする事象を規定する場合があります。それに加え、LLC法は一般的に特定の要件に合う場合、司法監督の下でのLLCの解散を規定しています。法令は、メンバー内又はマネージャー間でのデッドロック、詐欺、又は抑圧が起きた場合、又は訴訟をおこしているメンバーに向けられた違法行為、又は会社の存続を脅かす行為があるほとんどの場合に、そのような解散を規定しています。法令の要件に合えば、裁判所はLLCの解散を命じ、清算するように指示できます。LLCを解散させる行為には、資産の整理、全ての訴訟の解決、債権者への支払い、メンバーに残された資産の分配が含まれます。

非常に多くの場合、法人の解散は訴訟を提起しているメンバーの買収に繋がります。これは、非公式に、または公式に行われる可能性があります。LLC法令の多くが公式に、解散要求を主張された後、企業が買収の権利を行使するよう規定しています。経営契約でそのように規定している場合もあります。非公式には、法令または経営契約がそれを規定しているかに関わらず、メンバーがこれ以上共に働きたくない局面に達している、つまり難局を乗り切れずに互いを訴えている様な場合には、絶縁は避けがたく且つ望ましいです。そのような場合には、メンバーが互いに「絶縁」し、それぞれ別の道を歩むのが理にかなっています。これは、仲介や直接の和解交渉を通して多く行われ、一般的には、会計士がビジネスやメンバーの持分権の価値を評価することも必要となります。

第三者による訴訟:

LLCに対する第三者の訴訟は多くの場合、第三者へのLLCの経営の2つの種類(会社の責任、そのメンバーの責任)の法的責任に関係します。それぞれについてこの記事で議論します。

会社の責任:

LLCが基礎となる取引に関与している際、LLCに対抗する第三者による訴訟は一般的です。最も簡単な例としては、LLCが請求書の未払いのために訴えられるかもしれません。LLCが訴えられる際は、メンバーではなく法主体が、訴訟の当事者となります。先に言及したように、LLCはメンバーとは分離された法人であり、裁判所ではその名前で訴訟することも、訴訟されることもあります。メンバーは、通常LLCの義務に責任を負いせん。メンバーの責任の程度は、LLCへの投資の程度です。それゆえに、LLCに対するいかなる請求も、通常LLCの資産のみを使用して解決されます。

メンバーの責任:

メンバーはLLCの負債又は義務に対して、通常責任を負いません。しかし時折、第三者がLLCの義務に対して、メンバー自身に責任があると主張します。これは多くの場合、「オルター・エゴ」又は「法人格否認」などと様々に呼ばれる主張によって行われます。この主張の裏にある論理は、特定のメンバー、多くの場合1人のメンバーからなるLLCの唯一のメンバーが、LLCをそのメンバーの単なる延長であるかの様に扱ったというものです。これは、メンバーが自分の資産をLLCの資産と混合している場合、あるいはLLCの資産を個人の項目として引き出した分を適切に計算することなく、又は記載することなく使用し、引き出した場合、又はしばしば表現されるように、LLCの資産をそのメンバー自身の、個人的な銀行口座として使用していた場合に当てはまる虞があります。この主張が証明された場合、メンバーはLLCの義務を支払う責任を負うかもしれません。 したがってこのシナリオは、メンバーがLLCの義務に対して責任を負わないという、一般的な規則の例外にあたります。

「オルター・エゴ」及び「法人格否認」の法理は、会社に適用される法律に由来しています。この法律はゆっくりと発展しており、要求される形式や区別を用いた会社に適用される判例を、LLCに適用する事にためらいを示している裁判所もあります。しかし、LLCに適用可能としている裁判所もあります。この分野の法律は発展を続けているのです。

オルター・エゴの規範は、LLCが別個の法主体として経営されていたかどうかを決定する、様々な事実の審査を要請します。その要点として、LLCは柔軟性を提供し会社の手続きを緩和しますが、LLCはそのメンバーから別離しており、自立した実体として扱われるべきである事を忘れてはなりません。良識のある法律顧問及び良識な会計士であれば、これが確実に達成されるよう貢献できます。

結論

要約すると、LLCの訴訟では、繰り返し発生する特定の共通した問題があります。この記事では、最も一般的なものの内、いくつかの問題を明らかにしました。これらの問題の多様性は、個々のLLC、そのメンバー、そしてLLCの論争で現れるそれぞれの事例特有の状況と同じように、無限に広がります。これらの問題に対する早い段階での気づきにより、こうした問題に関わる対立を避けるための予防措置を講じられます。

※この記事は法律上の助言を構成するものではなく、一般的な法的原則の一般的な概要のみを示しています。 これらの原則は、管轄地によって異なる場合があります。 ご自身の特定の状況については、弁護士に相談する必要があります。 この記事の公開によって弁護士と依頼人の関係が形成されません。

※わかりやすいアメリカ法の記事について、英文及び和文両方での記載があり、それぞれの内容に齟齬等があるときは、明確に日本文優先の定めのない限り、常に英文が優先されます。

会社法
わかりやすいアメリカ法
タイトルとURLをコピーしました