フィルムのないフィルムマーケット

エンターテイメント法・スポーツ法

映画を輸出するための第一歩は、バイヤー探しです。自分のコネを使って買いたい人を探すのが一番手っ取り早いのですが、それではセラーにとって最高の取引条件を引出せるとは限りませんし、コネにも限界があります。そもそも、バイヤーが一人しかいなければ、取引の条件はどうしてもバイヤー側の言いなりになりがちです。交わした条件がいいのか悪いのかもわかりませんし、契約をしっかりしていなければ渡した素材がほかの国に出回ってしまうかもしれません。複数のバイヤーが出てきてはじめて、売るほうとしても値段をあげられますし、そのほかの取引条件も交渉を通して有利にできます。では、どうやって何人ものバイヤーを見つけるのでしょうか。

正しい輸出の第一歩は、フィルムマーケットへの出展です。毎年、世界中で映画祭が行われているのは皆さんもご存知でしょうが、実は映画祭は同時にフィルム(映画)マーケットでもあるのです。世界中から映画のセラーとバイヤーが集まって、何千万から数十億の取引を行っています。アニメの製作費は、通常の映画の超大作から比べると比較的低いのかもしれませんが、それでも最近はアニメといえども日本の超大作の作品が世界中に羽ばたいています。主たる映画祭は、カンヌ映画祭、ミラノ映画祭、アメリカ映画祭、サンダンス映画祭等があります。これらの映画マーケット(映画祭)に行くと日本からの映画も時折見かけます。(各映画祭のウェブサイトは、小職のウェブサイト「リンク」を参照してください。)

フィルムマーケットというと初めての方は、好きなだけ映画が鑑賞できて面白そうだと考えられるかもしれませんが、実際はそうでもない場合が多いのです。その年の自信作、超大作、話題作などが出品される映画祭と違って、映画のマーケットの方では実は完成した映画や映像がなかったりします。というのは、映画の製作には時間がかかるからなのです。映画の構想から始って、2年3年後に公開されるのはいいほうで、構想から公開まで10年20年というものさえあります。まあ、そういった特に例外的な映画を除いても、構想から、脚本、スタッフ・キャスト選び、ファイナンス、撮影、音入れ、編集、プロモーション等々時間のかかるのは避けられません。でも、完成した後にやっとプロモーションしていては遅いので、完成前からフィルムマーケットで売込みを開始するのです。その際は、本撮影前のスチール写真、特徴のある模型、プロモ用の短い予告編等を使って、バイヤーに売込みます。極端な例では、脚本だけでの売込みもありえます。

人気のある俳優、有名な監督、CGが多く入れられた映像等が事前にわかっている映画などは、完成フィルムが無くともバイヤーからは高い値段でのオファーが届くのです。かといって人気俳優の出演する映画がすべて大ヒットするとの保証はありませんので、そこはセラーとバイヤーの 真剣勝負となります。ですから、フィルムマーケットは、純粋にシリアスなビジネス交渉の場といえるでしょう。

※この記事は法律上の助言を構成するものではなく、一般的な法的原則の一般的な概要のみを示しています。 これらの原則は、管轄地によって異なる場合があります。 ご自身の特定の状況については、弁護士に相談する必要があります。 この記事の公開によって弁護士と依頼人の関係が形成されません。

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