婚前契約

家族法

結婚式とは、家族に関わる重要な儀礼であり、記念すべき祝典です。この伝統をまもるため、多くのカップルはこの大事な日の前に金銭問題をはっきりさせようとします。そして結婚を考えているカップルの中には、もし離婚することになった場合に、資産、収入、家族を失うリスクを避けたいと考える人もいることでしょう。2回目、3回目の結婚となる人が、新しい妻との間ではなく、昔の妻との子どもや孫に自分の資産や個人的な所有物が渡るよう希望するケースもあります。


こういった問題を解決できる方法として、婚前契約という仕組みがあります。プレナプチュアル、または婚姻前契約としても知られるこの契約は、有名人が交わしたとか、交わせなかった(元ビートルズのポール・マッカートニーの場合のように)といったようにニュースとして取り上げられることも多いです。しかしだからといって、婚前契約はお金持ちと有名人だけのものというわけではありません。これは新しい結婚生活が破綻した際、離婚裁判所が財産分割又は配偶者の扶養を判断する際に、曖昧さをなくし自分の遺産を明確にしたい全ての人のためにあるのです。


夫婦が有効な婚前契約へ署名していれば、離婚又は死亡の際には、裁判所が適用する通常の規定ではなく、契約内容により財産の権利及び扶養義務が決定されます。契約によって、州法上の定めより配偶者に多くも少なくも分割できます。大部分の州では、裁判所が公平に財産を分割するので、折半かその他の分割になるか、結論は予測しがたいのです。夫婦の一方がなくなった場合、裁判所は通常遺言の内容に従いますが、大部分の州において、残された配偶者には遺言の内容に関わらず、財産の3分の1から2分の1の権利があるとされます。


つまり有効な婚前契約は、通常の法律の代わりに財産と収入の分割を決定するのです。多くの場合、婚前契約によって財産の少ない方の配偶者が、離婚又は遺言に関する通常の法律の定めよりも少ない額を受取ります。


一般的には、婚前契約は両当事者が文書に署名しなければなりません。大部分の州では、両当事者には互いの収入と資産の明確な文書開示が要求されます。このようにして、両当事者は、何の権利を放棄しているかをよりよく認識できるのです。収入と資産の完全な開示を免除できる州もありますが、そうした権利放棄は自発的にされなければならず、その場合でも相手方の本当の資産額についての大まかな情報を理解することは重要です。


多くの州では、婚前契約に署名する時期が規定されていません。しかし一般的には、それぞれが内容の全てを吟味し自発的に署名したと示すために、結婚式まで余裕のある時期での交渉及び契約への署名が望まれます。財産の多い方の配偶者が結婚式の前日に婚約者に契約書を示したならば、裁判所は後々契約が強制されたとして無効と判断する可能性もあります。土壇場での婚前契約は自動的には無効とはなりませんが、タイミングは契約が有効か判断する重要な要素となるのです。


当然のことながら、婚前契約が詐欺や強要の結果であってはなりません。夫婦の一方(特に財産のある方)が故意に財産をごまかした場合、契約は詐欺により無効とされる可能性が高くなります。たとえば、夫が将来の妻に対して財産を隠して、離婚の際には少額の援助で済むように同意させたならば、裁判所はおそらく契約を無効にするでしょう。同様に、一方が他方に対して契約に署名させようと過度のプレッシャーをかけた場合、裁判所は強要を理由として契約を無効と宣言する可能性があります。


婚前契約を結ぶ際弁護士に依頼すれば、契約書が正しく作成され、両者が予め承知して判断できるよう確認してくれます。通常多くの財産を持つ当事者の弁護士がまず契約書を作成し、財産の少ない方の当事者が自分の弁護士に契約書を検討するように依頼します。有効な契約とするために弁護士への依頼が必要なわけではありませんが、各々の当事者が代理されており、本格的な交渉のやり取りがあれば、契約が有効となる可能性が高くなります。そして当事者のうちの一方に独自の弁護士がいなければ、契約は問題ありとされる可能性が高まります。


弁護士は、婚前契約が法的に有効で、目的と一致しているか確認するだけでなく、結婚の前に計画を実現するため、信託などの他の方法がないかどうかも検討してくれます。

※この記事は法律上の助言を構成するものではなく、一般的な法的原則の一般的な概要のみを示しています。 これらの原則は、管轄地によって異なる場合があります。 ご自身の特定の状況については、弁護士に相談する必要があります。 この記事の公開によって弁護士と依頼人の関係が形成されません。

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