医療処置事前指示書(アドバンスディレクティブ)

ヘルスケア法

元最高裁判所判事のベンジャミン・カードーゾは、「健全な精神を持つ全ての成人は、自分自身の体がどう取り扱われるか決定する権利がある。」と宣言しました。医療処置事前指示書とは、自分で意思表示ができないとき、代わりに医療的判断をしてくれる人を選ぶ法的手段のことです。

 

終末期医療における事前指示書(リビングウィル)はその一つで、意思決定能力を失ったときの治療やケアに関する、あらゆる希望を書面によって明確に指定することができます。延命措置を望むかどうかなど、「私の医療措置を判断するときは、これらの指示に従ってください!」と意思表示ができるうちにあらかじめ示しておくのです。ただしこれ自体は非常に限定的であり、通常人生の最終段階、終末期の場面でのみ適用されます。


もう一つの形態として、医療処置委任状(別名医療処置代理または医療委任状)があります。この委任状では、あなたの健康に関わる判断をする正当な権限を持つ代理人を選任します。これは代理人に対して、医療処置について判断できる範囲を自由に決定できますので、適用は末期だけに限定されません。選任された代理人には、医学上のあらゆる状況や条件、そして本人の希望を考慮の上判断する権限が与えられます。医療処置委任状は、遺言よりももっと広範囲でフレキシブルなのです。


中には遺言と医療処置委任状を一つの文書にまとめた包括的医療処置委任状を作成するように勧める弁護士もいます。このような文書には、臓器提供や臓器移植の可否、どこでどういった医療を受けたいか等の希望も含めることができるからです。


将来の医療判断を計画する際、家族と話し合うという一番大切なステップをないがしろにして、自分の希望だけを書き込んだ医療処置事前指示書を作成しては意味がありません。有意義な指示書を作成するためには、医師や家族、そしてあなたが話せなくなったときに代理をしてくれる人に、この指示書の計画段階からあなたの希望、心配、優先順位を伝えておくことが必要です。アドバンス・ケア・プランニング(ACP)、人生会議とも呼ばれるこの作成プロセスは、何度も繰り返さなければならない、継続的な話合いの場とお考えください。最終的に年を取って重病を患い、意見が根本的に変わるかもしれません。たとえば、健康な35歳のあなたと慢性病を患っている85歳のあなたでは、末期状態についての考えはおそらく変わってくるでしょう。事前指示書は人生の節目節目でその都度変更される、未完成物として考えるべきです。

 

定期的な見直しを

 

生活状況の変化によって自分の中の優先順位や目標も変わりますので、医療処置事前指示書は家族や弁護士と定期的に見直しましょう。いわゆる5Dのいづれかに当てはまるとき、定期的な指示書の見直しが特に大切になってきます。

 

  1. Decade(10年):人生で10年毎の節目
  2. Death(死):愛する人を失ったとき
  3. Divorce(離婚):離婚やその他家族に関する重要な変化
  4. Diagnosis(診断):健康状態が深刻と診断されたとき
  5. Decline(衰弱):健康状態の著しい衰弱や悪化、特に自分一人では生活できなくなったとき

 

※この記事は法律上の助言を構成するものではなく、一般的な法的原則の一般的な概要のみを示しています。 これらの原則は、管轄地によって異なる場合があります。 ご自身の特定の状況については、弁護士に相談する必要があります。 この記事の公開によって弁護士と依頼人の関係が形成されません。

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