名誉毀損

憲法

米国大統領選挙に関心を寄せている人は誰でも(そして、関心のない大勢の人々でさえも)、ドナルド・トランプ氏が表舞台に立ち、この選挙戦を通じて大部分のメディアの注目の的になっているのご存知だろう。その主な理由は、毎週のようになされるトランプ氏の突飛な発言にあるようだ。日本にお住まいの多くの人たちは、日本政府高官が公に核兵器に反対する声明を繰り返し述べているにも関わらず、トランプ氏が日本と韓国が核兵器を開発すべきと最近発言したのをお気づきだろう。(但し、後に撤回したとも伝えられている。)
トランプ氏の声明は、よく突飛で、全く見当違いだが、政府からの反発なく合衆国内でそう言えるのは、合衆国憲法で保障されている言論の自由があるからだ。しかしながら、皮肉にも、トランプ氏は、自らに否定的な発言をする人に対しては、合衆国の司法権(合衆国政府の一部である)を利用してしばしば黙らせようとしている。トランプ氏は、名誉毀損を理由によく個人を訴えたり、訴えると脅したりする。これに加えて、大統領になったら、名誉毀損の法律を変えるとまで踏み込んでいる。推測するに、人に否定的な発言をする人々を訴えやすくするのであろう。

トランプ氏の言動は、興味深く、そして複雑で難しい法律問題を照らし出している。合衆国はかつて、イギリスの植民地だったため、合衆国は多くの古いイギリスのコモンローを採用し、それには名誉毀損の言論禁止が含まれている。その結果、合衆国の法律の下、違反者による有害な虚偽の発言を理由として、その違反者を訴え、損害を補償させられる。合衆国が生まれたとき、建国者は憲法を起草し、承認し、「議会は言論の自由を制限する法律を作ってはならない」と明言した。言い換えれば、政府は、人々の自由な言論を制限するべきではない。これら二つの原則は、こうして背中合わせにある。合衆国の裁判所は、名誉毀損の法律と、合衆国内での言論の自由との関係を説明し判断するように追い込まれている。ここ2世紀に渉る多くの裁判の結論は、少しわかり難く複雑だ。しかしながら、ひとつ明確なのは、合衆国憲法が、言論の自由を保障していても、誰かに関する有害な虚偽の発言をすれば、訴えられ、その人への損賠賠償の支払い命令を受ける。米国旅行や米国在住を考えているならば、この原則を理解するのは大切だ。基本的には言論は保護され、望むままになんでも自由に言えるが、発言に端を発して波風がたつ可能性は存在する。合衆国で、あなたやあなたの知人が名誉毀損で訴えられる恐れがあるならば、この複雑な法律領域を理解している弁護士に相談するのが必須になる。

※この記事は法律上の助言を構成するものではなく、一般的な法的原則の一般的な概要のみを示しています。 これらの原則は、管轄地によって異なる場合があります。 ご自身の特定の状況については、弁護士に相談する必要があります。 この記事の公開によって弁護士と依頼人の関係が形成されません。

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