突然、「この歯の治療はやりません。」と歯医者が言い出しました。最近経験した話です。評判のよいかかりつけ医で信頼もしているのですが、彼は「奥歯の治療は、デンタルスクールのクラスで学ばなかったし、教授にもこういった問題に遭遇したら、できないと答えるように教えられた。」と言って譲りません。結局奥歯の専門医を紹介してもらい、そちらを予約し治療してもらうことになりました。
いざ奥歯の専門医に行くと、その仕事振りは見事であり、一事が万事、治療の手際はもちろん病院に入ってから出るまで、無駄のないスムーズな流れでさすがプロと思い知らされました。ただ、事前に打ち合わせしたときにわかってはいたのですが、治療費のほうもなかなかの値段で、通常の部分の同じような治療と比較すると、何倍にもなってしまいました。この奥歯の専門医は、一般の歯科医からの紹介を受けて商売が繁盛しており、開業時間も短く、休みも結構しっかり取っているようでした。現在、アメリカにどれくらいの数の歯科医と奥歯の専門医がいるかわかりませんが、一般の歯医者にすれば奥歯の専門医ほど割りのいい仕事はないと思っているのではないでしょうか。
この経験から言えるのは、専門化すればするほど、クライアントの数が増えて競争相手の数が減るだけでなく、料金も高くチャージできるという法則が、歯医者の世界にもそのまま当てはまっているということです。
さて、国際法務を一つのビジネスと考えて見ましょう。日本でも、世間をにぎわせているロースクール開設、司法試験合格者数の増加、帰国子女を含むバイリンガルの若い大学卒業生の増加等があり、国際法務のビジネスはこれまでのように、一部の人だけが担当できるという風潮ではなくなってきています。これからさらに競争が激しくなっていくという状況はどのような分野にもあてはまり、こうして競い合うことで技術や経験といったの実力が向上し、企業として健康な状態を維持できるのです。
単に英語で法律業務をこなすといった段階から、さらに特定の分野に特化していくといった段階へステップアップしていくことが、これからの国際法務のあるべき姿であるような気がします。
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