フィルムマーケットはお土産コーナー

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今回はフィルムマーケットの雰囲気をお伝えいたします。皆さんも一度くらいは、映画祭のレッドカーペット上で、スターたちがそれぞれタキシードやドレスでポーズを取りながら会場に入っていくのを、テレビのニュースで見たことがあるのではないでしょうか。ああいった場面は、映画祭の1つの醍醐味であって華やかですが、フィルムマーケットの方は随分感じが違います。初回でも説明したように、映画祭に映画はあっても、フィルムマーケットにフィルムは無い場合が多いのです。それは、映画の製作が通常何年もかかるため、完成を待ってマーケティングをしていては遅いからなのです。(詳細は、「フィルムの無いフィルムマーケット」を参照してください。)

それでは、フィルムの無い映画をどうやって売買するのかというと、脚本、出演俳優、予算、監督、CGの有無等で売上げの予想を判断して交渉します。例えば、過去いくつもヒットを飛ばした脚本家の脚本で、売出し中の俳優を使い、製作費の予算が高額で、有名な監督がメガホンを取り、CGを惜しげもなく使って製作する映画が予定されていれば、もうバイヤーはいくらお金を出しても自分の国での興行権を手に入れたいところです。反対にこのような点で魅力的なところがない映画は、バイヤーの引きはあまり期待できません。

そこで、映画のセラーは映像がないハンディを克服するためにいろいろな工夫をします。例えば、アメリカンフィルムマーケットは、サンタモニカの海岸沿いのホテルを一軒丸ごと会場にして開催されますが、映画会社はマーケット期間中そのホテルの続き部屋を2つ3つ借り切って、人目を引くディスプレーを設置したり、完成はしてないものの部分的に撮影済みの映像を大画面テレビで写したり、スチール写真を展示したりします。もし、興味のあるバイヤーが現れると、展示しているスペースの隣の部屋の静かに商談できるスペースに案内して交渉が始まります。一回の交渉でうまくまとまることは、そうそうありえませんが、そこからセラーとバイヤーのやり取りが始まるのです。バイヤーのほうとしては、期間中毎日毎日ホテル中を歩き回って、期待できそうな映画を探し、よさそうな映画があればライバルに遅れないように交渉していきます。会場のホテルを一日歩き回ると、いろいろな映画のパンフレットが一杯たまってしまいます。パンフレットといっても、何億何十億の映画のパンフレットですから良い紙を使っていますので、いくつも集まるとかなり重くなります。せっかくの資料ですから、捨てるわけにもいきませんので厄介なお荷物となります。実際会場のゴミ箱付近では、あまり引きのない映画のパンフレットなどが無残にも捨てられていたりするのを見かけます。そこで、セラーもパンフレットを入れる袋に映画の宣伝を入れたり、映画の中で出てくるキャラクターのフィギュアを作ったり、Tシャツを配ったりといった工夫をしています。もらう方としては、こういったものの方が、パンフレットより随分とありがたかったりもします。

私も一度フィルムマーケットの帰りに、会社の若い人たちからダンボール箱を一つ預かったことがあります。空港でのチェックインの際、窓口の人に自分で荷造りしましたか、中身は何ですか等質問されたのですが、私はまったく見当がつきません。会社の業務上必要なものだとはわかりますが、それ以上はまったくわからないので、その旨説明しました。すると窓口の人は、一生懸命箱を開けて中身を確かめようとしています。私が会社で使うだの業務上必要だの説明したので、厳重に荷崩れしないように包装してあるダンボールを慎重にやっとあけて中身を確認していた彼は、中身を一瞥すると骨折り損のくたびれもうけとでも言わんばかりにさっさとふたをしめました。私が、中身を尋ねると私の顔をまじまじと見て、一言「おもちゃ」といいました。多分、彼は私がふざけてるとでも思ったのに違いありません。


フィルムマーケットが終わると後は持ち帰った資料を研究して、実際に買い付けの最終段階へと進んでいきますが、その際パンフレットとかよりも、よくできたおもちゃのほうが作品を良く説明してくれたりもしますので、あながちおもちゃといえども馬鹿にできないところがあります。ただ、一般の人にまじめな仕事をしていると納得してもらうのは、いい大人がおもちゃを集めてダンボールに入れて帰るのですから、期待するほうが間違いなのかもしれません。

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